長年皮膚科で多くの薄毛患者さんの診療に携わってこられた、毛髪専門医の先生にお話を伺います。先生、薄毛の原因は多岐にわたると聞きますが、皮膚科ではどのように診断を進めるのでしょうか。「はい、薄毛と一口に言っても、その原因は様々です。代表的なものとしては、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)といった遺伝的要因やホルモンバランスが関与するもの、円形脱毛症のような自己免疫疾患、頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎など)によるもの、さらには栄養不足、ストレス、薬剤の副作用などがあります。皮膚科では、まず詳細な問診で患者さんの生活習慣や既往歴、家族歴などを伺い、視診や触診で頭皮や毛髪の状態を丁寧に確認します。必要に応じてマイクロスコープで毛穴の状態を観察したり、血液検査でホルモン値や栄養状態、甲状腺機能などをチェックしたりすることもあります。これらの情報を総合的に判断し、原因を特定していくのです」と佐藤先生は語ります。では、原因が特定された後、どのような対策や治療が行われるのでしょうか。「原因によって治療法は大きく異なります。AGAやFAGAであれば、進行を抑制し発毛を促すための内服薬や外用薬(ミノキシジルなど)が中心となります。円形脱毛症であれば、ステロイド外用や局所注射、抗アレルギー薬などが用いられます。脂漏性皮膚炎など頭皮環境の悪化が原因であれば、まずその炎症を抑える治療を優先します。また、どのようなタイプの薄毛であっても、バランスの取れた食事、質の高い睡眠、適度な運動、ストレス管理といった生活習慣の改善は、治療効果を高める上で非常に重要です。皮膚科では、これらの生活指導も併せて行うことが多いです」とのこと。早期発見、早期治療が重要と言われますが、どのタイミングで皮膚科を受診すべきでしょうか。「抜け毛の量が急に増えた、髪のボリュームが減ってきた、地肌が透けて見えるようになったなど、ご自身で明らかな変化を感じたら、まずは一度ご相談いただくのが良いでしょう。特にAGAやFAGAは進行性の脱毛症ですので、放置すると改善が難しくなることがあります。早期に適切な治療を開始することで、進行を遅らせたり、改善させたりする可能性が高まります。自己判断で市販の育毛剤を試すのも一つの方法ですが、効果が見られない場合は、やはり専門医の診断を仰ぐことをお勧めします」とアドバイスします。