現代社会はストレス社会とも言われ、多くの人が何らかのストレスを抱えながら生活しています。過度なストレスは心身に様々な悪影響を及ぼしますが、自分では気づかないうちにストレスが蓄積していることも少なくありません。そこで注目されているのが、毛髪を用いたコルチゾール測定です。コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンで、ストレスに反応して分泌量が増えることから「ストレスホルモン」とも呼ばれています。血糖値の上昇、免疫機能の調整、炎症の抑制など、生命維持に不可欠な役割も担っていますが、慢性的に高い状態が続くと、不眠、うつ症状、免疫力低下、高血圧、糖尿病のリスク上昇など、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。従来、コルチゾールの測定は血液や唾液、尿を用いて行われることが一般的でしたが、これらの検査は採血時の痛みや、一日のうちでも数値が大きく変動する日内変動の影響を受けるという課題がありました。一方、毛髪は過去数ヶ月間の平均的なコルチゾールレベルを反映すると考えられており、慢性的なストレス状態を評価するのに適しているとされています。毛髪は1ヶ月に約1センチ伸びるため、例えば根元から3センチの毛髪を分析すれば、過去約3ヶ月間のコルチゾール蓄積量を知ることができるというわけです。この毛髪コルチゾール測定は、近年、自宅で手軽に利用できる検査キットとしても登場し、医療機関に行かなくても自身のストレスレベルの一端を客観的に把握する手段として関心を集めています。キットの利用方法は簡単で、指定された量の毛髪を採取して郵送するだけです。結果レポートでは、自身のコルチゾール値が標準範囲と比較してどの程度なのか、また、それに基づいた生活習慣のアドバイスなどが提供されることが一般的です。ただし、毛髪コルチゾール測定の結果はあくまで目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。また、個人の体質や生活環境、毛髪の状態によっても結果が左右される可能性があるため、解釈には注意が必要です。もし高いストレス状態が示唆された場合や、心身の不調を感じる場合は、専門医に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。毛髪コルチゾール測定を、自身のストレス状態を客観視し、生活習慣を見直すきっかけとして活用してみてはいかがでしょうか。