AGA(男性型脱毛症)の治療において、より高い効果を期待する場合、プロペシア(有効成分:フィナステリド)とミノキシジルという2つの代表的な治療薬を併用する「併用療法」が選択されることがあります。それぞれ作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで、単独で使用するよりも相乗的な効果が得られる可能性があるのです。この併用療法のメカニズムと期待できる効果について解説します。まず、プロペシアの役割は、AGAの主な原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制することです。男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5α-リダクターゼという酵素によってDHTに変換されるのをブロックします。DHTは毛乳頭細胞に作用し、ヘアサイクルを乱して薄毛を進行させるため、プロペシアはこのDHTの攻撃から毛根を守る「守り」の役割を果たします。抜け毛を減らし、薄毛の進行を遅らせる効果が期待できます。一方、ミノキシジルは、主に外用薬として頭皮に塗布することで、頭皮の血行を促進し、毛母細胞を活性化させる働きがあります。血管を拡張させ、毛根への栄養供給をスムーズにすることで、発毛を促し、髪の毛を太く長く育てる「攻め」の役割を担います。また、毛母細胞の増殖を促したり、ヘアサイクルの成長期を延長させたりする効果も期待されています。このように、プロペシアが「抜け毛の進行を抑える」のに対し、ミノキシジルは「新たな髪の毛を生やし育てる」という、それぞれ異なるアプローチでAGAに作用します。この2つの薬剤を併用することで、「抜け毛を減らしながら、発毛を促進する」という、より包括的で強力な薄毛改善効果が期待できるのです。例えるなら、プロペシアが畑の土壌を守り、雑草(DHTの影響)が生えにくい環境を作るのに対し、ミノキシジルは肥料を与えて作物の成長を促すようなイメージです。多くのAGA専門クリニックでは、このプロペシアとミノキシジルの併用療法が、効果的な治療戦略の一つとして積極的に行われています。特に、ある程度AGAが進行している場合や、より早く効果を実感したい場合に推奨されることが多いようです。ただし、プロペシアもミノキシジルも医薬品であり、それぞれに副作用のリスクがあります。併用することで、それぞれの副作用が同時に現れる可能性も考慮しなければなりません。また、治療費も単独療法より高くなる傾向があります。