抜け毛が増えてきたと感じたとき、その原因が鉄分不足による貧血にあるかもしれないと考えたことはありますか?「貧血と抜け毛?」と意外に思う方もいるかもしれませんが、実は鉄分は健康な髪を育む上で非常に重要な役割を担っており、その不足は抜け毛を引き起こす一因となり得るのです。鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの主要な構成成分です。ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素と結合し、全身の細胞に酸素を運搬するという大切な働きをしています。もちろん、髪の毛を作り出す毛母細胞も、活動するためには十分な酸素を必要とします。しかし、鉄分が不足して貧血状態になると、ヘモグロビンの量が減少し、全身への酸素供給能力が低下します。その結果、頭皮の毛母細胞も酸素不足に陥り、細胞分裂やタンパク質の合成といった髪の成長に必要な活動が滞ってしまうのです。これにより、髪が細く弱くなったり、成長が途中で止まってしまったり、抜けやすくなったりする可能性があります。特に女性は、月経による定期的な出血や、妊娠・出産、授乳期などで鉄分が失われやすく、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。また、過度なダイエットによる食事制限や、偏った食生活も鉄分不足を招く原因となります。鉄分不足のサインとしては、抜け毛の増加以外にも、顔面蒼白、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、爪がもろくなる、疲れやすいといった症状が現れることがあります。これらの症状に心当たりがある場合は、一度医療機関で血液検査を受け、貧血の有無を確認することをおすすめします。鉄分を多く含む食品としては、レバー(豚・鶏・牛)、赤身の肉、カツオやマグロなどの赤身の魚、あさりやしじみなどの貝類、大豆製品(納豆、豆腐、豆乳など)、緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜など)、海藻類(ひじきなど)が挙げられます。鉄分には、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄の方が吸収率が高いと言われていますが、非ヘム鉄もビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂取することで吸収率を高めることができます。例えば、ほうれん草のおひたしにレモン汁を絞ったり、肉や魚と一緒に野菜を食べたりする工夫をすると良いでしょう。抜け毛の悩みを抱えている方は、鉄分が不足していないか、日々の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。