これはある四十代男性の体験談です。彼は三十代後半から進行した生え際の後退に悩み、毎朝鏡の前で長い前髪をセットすることに膨大な時間を費やしていました。スプレーで固めた前髪は、風が吹けば崩れ、汗をかけば束になって割れてしまい、そのたびにトイレに駆け込んで直す日々。仕事中も、相手の視線が自分の額に向いているのではないかと疑心暗鬼になり、目を見て話すことさえ億劫になっていたと言います。「ハゲていると思われたくない」という一心で自分を守っていましたが、その実、心は常に不安とストレスでいっぱいでした。転機が訪れたのは、妻からの「いっそのこと切っちゃえば? その方がかっこいいと思うよ」という一言でした。半信半疑ながらも、隠す生活に疲れ果てていた彼は、週末に思い切ってバーバーを予約しました。 バリカンが入り、大切に守ってきた前髪が床に落ちていく瞬間、彼は喪失感よりも不思議な爽快感を覚えたそうです。仕上がった鏡の中の自分は、頭皮が露わになっていましたが、以前のような惨めさはなく、むしろ精悍で堂々として見えました。翌日、会社に行くと、周囲の反応は驚くほどポジティブでした。「さっぱりしましたね」「若返ったんじゃないですか」「仕事ができそうに見える」と、賞賛の嵐だったのです。何より変わったのは彼自身の内面でした。もう風を怖がる必要も、雨を気にする必要もありません。隠すものがなくなったことで、彼は誰に対してもオープンに振る舞えるようになり、仕事のパフォーマンスも向上しました。「髪を失うことが怖かったけれど、手放してみたら自信が手に入った」。彼は今、短く刈り込んだ頭を撫でながら、最高の笑顔でそう語ります。おしゃれ坊主は、単なる髪型ではなく、生き方を変えるスイッチになり得るのです。